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東京都中野区のALS患者さん(以下、Aさん)の食事介助の事例を紹介します。

胃ろうではなく口から食べたい

AさんはALSの病状進行を認めながらも、胃ろうは希望していません。ただし、やみくもに拒否しているのではありません。自身の病状を冷静に見つめた上で、今はまだその時ではないと感じ、口から食べることで得られる健全な身体機能、命の実感といったことを、可能な限り持ち続けたいと切望しているからです。幸いAさんには、医師、看護師、PT・OT、マッサージ師、そして日常生活を支援するヘルパー達によって、今できる最善のケアを実践しようと、訪問介護におけるチームケアの好環境が成り立っています。そして、複数の介護事業所(クリオケアセンター、グリーンケア、ニチイ)の連携により、Aさんの残存機能を生かして、三度の食事を普通食で経口摂取することが、実際に可能となりました。


箸先が舌の代わりに

Aさんが食べるためには、ヘルパーの持つ箸がAさんの舌になる、という特殊な食事介助を行う必要があります。Aさんは、咀嚼する力、飲み込む力、咳払いする力は顕著に衰えてはいませんが、唇が閉じにくくなり、舌の動きが非常に鈍くなってきました。手助けが無ければ、口に食物を入れても何度か噛んだらそれまでで、細かく噛み砕くために食物を口の中で動かすことができません。
今、Aさんの舌の役割を、ヘルパーの持つ箸が担っています。口の中に散らばった食物を、しっかり噛んで唾液と混じらせ、飲み込みに適した食塊にするまで、箸が舌の代わりになります。食塊がいい形になると、自然と嚥下反射がおきスムーズに飲み下します。
例えて言えば、まるで片足が動かなくなった人が、杖を使うことで屋外を自由に歩きまわれるかのようです。ところが杖は自分で操作しますが、箸は他人が操作するので、Aさんとしては大変です。舌や口の中を箸先で突かれて傷つくこともしばしばです。それでも口から食べることにしがみつき、ヘルパーに気持ちを伝え、口の中の仕組みを伝えながら、三度の食事を継続しています。

食事介助の実践例

Aさんの食事介助にマニュアルはありません。また、病状は変化していくため、介助の方法も食事の内容も、常にゆるやかに変わっていきます。そうした環境の中で、Aさんとヘルパー達の文字盤によるコミュニケーションや幾度となる試行錯誤の結果、一般知識に捉われた見方や勘違いが払拭され、Aさんにとって相応しい食事の形が見えてきました。また、スムーズに食べていただくには、ヘルパーの食事介助のスキルより、食べるまでの段取りの方が重要だということが分かりました。食材を何にするか、どう切るか、どう焼くか、どの食器を使うか、等。 そこまでの段取りが8割、スキルは2割というのが、実際の感触です。

ここに、食事介助の実践例 「食べることは生きること」を掲載します。Aさんと共に築いたAさんのための食事介助ですが、食物を口から摂ることに懸命に取り組んでいらっしゃる方々にも、ご覧いただけましたら幸いです。